花嫁の母


オルガン演奏の「結婚行進曲」が流れてチャペルの扉が開く。
緊張した夫の顔とはにかんだような娘の顔を見た途端、涙が溢れてとまらない。
せっかく久々に気合を入れてメイクをしたのに、既に顔はボロボロになってしまった。
式が終って、娘の高校・大学と一緒だったお友達から声をかけられ又涙。
フラワーシャワーの為に玄関を出ると、桂さんとゆみこさんの姿を発見。
わざわざ見に来て下さって、ありがとうございます。
涙もひとまずおさまって、披露宴会場に降りていくと、娘とお婿さんの二人渾身の大きなウェルカムボードが目に飛び込んできた。
あのウェルカムアニマルも受付にちょこんとお座りしている。
席札もプログラムも招待状同様、二人色の二人の手作りで、カードには二人直筆のメッセージが書かれていた。忙しいのにがんばったね。
サークルの先輩のご発声による乾杯で祝宴が始まった。
仕事関係の来賓は一切なし。だから長い祝辞もない。余興もひとつだけ。
親族とたくさんの友人に囲まれた和やかで若々しい、食事を楽しむ披露宴。
これもやっぱり二人色。
お色直しの為に二人が退席する際、突然「新婦のお母様」と司会の方から娘の介添え役の指名を受けた。
「え〜っ、聞いてないよぉ」
娘の手を引きながら又、涙が溢れてしまう。
二人の披露宴に私が出した注文はただひとつ。
「花嫁の手紙なんて絶対泣いちゃうから、それだけはやめてね」と。
だから花束贈呈はしないかわりに、ボックス入りのプリザーブドフラワーと、二人がこの日の為にロクロをまわして焼いてくれたという手作りの夫婦茶碗のプレゼント。
それも知らされていなかったから又、泣けてくる。
泣きっぱなしの披露宴が終ってホテルに戻り、会場では読まれなかった娘からの手紙を読んで又ひと泣き。
札幌を発つ前日、「思い切り泣いてきて」とメールをくれた友人の言葉通りに
そして娘からは「お母さん、泣きすぎ〜」と言われるほどに
花嫁の母は泣いてばかりでした。